「彼女の物語」を知る"ビデオ"ゲーム、Her Storyの感想記事です。
ジャンル:アドベンチャー 対応機種:PC(Steam)、iOS、Android
Steamページ:Her Story on Steam
あらすじ
1994年のイギリスで、一人の男性が行方不明となる事件が発生した。その男性の妻とされる女性に対する事情聴取は数日間、7回にも及び、その際に録画された映像は警察のデータベースに保存されている。
プレイヤーは警察の端末を操る人物となり、分割された事情聴取映像を元に事件の手がかりを探っていく。
動画内に散らばるキーワードを元にデータベースを検索し、事件の真相を導き出しましょう。
感想
本作はジャンルとしては推理ものとなっていますが、かなり特殊なシステムとなっています。
何故ならば、プレイヤーが行えることは過去の殺人事件に関する事情聴取を録画した断片映像を検索し、再生することだけだからです。
ゲーム開始時、プレイヤーは以下のような画面と向き合うことになります。
最初にデフォルトで「殺人」という語句が入力されており、この語句をそのまま検索すると3つのファイルがヒットします。
これらのうち一つをクリックすることで一人の女性の事情聴取の映像の一部を見ることが出来ます。
映像は一つ一つがかなり短く、長くても1分前後で終わるものがほとんどです。
プレイヤーはこれらの映像から新しいキーワードを推測、推理し、検索することで新しい映像を発見し、それらを繰り返していくことで事件の真相を導き出すことが目的となっています。
この「検索」というのがこのゲームの肝となっており、検索するキーワードが映像で気になったものでも、推理して手に入れたものでも、はたまた適当に思いついたものでもデータベースは平等に検索してくれます。
そのため、プレイヤー一人一人ごとに異なる推理の道のりを作ることができます。この、「自分なりに考えたキーワードによって新しい情報が開示される」感覚は結構快感です。
「だったら適当に入れてみたらなんとかなるんじゃない?」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、プレイヤーが使ってるデータベースがおんぼろなせいか、ひとつのキーワードで検索できるファイルは5つまでとなっており、6個以上のファイルがヒットした場合は最初から5番目までのファイルしか閲覧できません。そのため、ある程度語句を絞り込む必要がでてきます。
自分がどれだけのビデオを確認できたのかといった情報は、データベースチェッカーという機能で確認できます。
実は、このゲームではエンディングを迎えるのに全てのビデオを見る必要はありません。また、全てのビデオを見たからといって全ての謎が解き明かされるわけではありません。
何故ならば、この作品での証拠は全て「彼女の証言」という形でしか提示されないため、最後まで彼女が語らなかったことは推測するしかできないためです。
しかし、だからといってこの作品が駄作というわけでは全くありません。何故ならば、この作品は推理ゲームであるのと同時に「彼女の物語」を知る"ビデオ"ゲームでもあるからです。彼女は一体誰なのか、どのように生きてきたのかがビデオを見ていくにつれ明らかになって行くことでしょう。
登場する女性を演じるヴィヴァ・セイフェルト(Viva・Seifelt)の魅力ある演技(これがまたスゴイ、このゲームが名作といわれる理由の大きな一つです)、シンプルなUIと操作はプレイの没入感を深め、素晴らしいゲーム体験に誘ってくれます。
さて、作中でのこの事件は既に「終わった」事件です。では、「プレイヤー」は「何故」データベースを調べているのでしょうか?もちろんここにも「物語」が存在します。ぜひ確かめてみてください。
特異なゲーム体験を求める人にはぜひプレイしてほしい本作、是非ネタバレ抜きでお楽しみください。